① |
原則的に遺言があれば遺言が優先し、遺言に基づいた遺産分割になります。
遺言に不満があっても、実際に相続が開始して遺留分(※1)を侵害されない限り、文句は言えません。しかも、文句を言えるのも、相続開始と遺留分を侵害する遺贈等がなされたことを知ってから1年間だけです。
ただ、一旦、文句を言った後は、1年間という期間制限はありません。
例外として、例えば、①遺言執行者がいないか、いてもその同意があり、かつ、②相続人全員も合意しているような場合に限って、遺言と異なる遺産分割もできます。 |
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② |
もし遺言がなければ、話し合い(遺産分割協議)で解決します。
話し合いですから当事者が納得さえすれば、どんな決め方でも構いません。 |
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③ |
そして、この話し合いもダメだったときは、法定相続分(※2)で決めます。
相続人になれる順番に従い、相続人が誰かにより法定相続分は変化します。 |
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※1遺留分 |
1.遺留分とは、奪うことのできない権利として相続人に認められている最低限の取
り分のことです。
(ア)相続人が直系尊属だけになる場合は、
遺留分権利者の法定相続分の3分の1が、
(イ)相続人がそれ以外になる場合は、
遺留分権利者の法定相続分の2分の1 が、
最低限の取り分として認められています。 |
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例を挙げますと、父Aの死亡により、母Bと子供CDが遺されたとき、「子供Cに
全財産を相続させる」との遺言が見つかったとします。
このとき、相続人は母Bと子供CDですから(相続人が誰か・法定相続分はどれだ
けかは、下の※2 法定相続分を参照して下さい)、相続人が直系尊属だけの場合
ではないので(イ)の場合になります。
従って、母Bの法定相続分は2分の1、子Dの法定相続分は4分の1ですので、
遺留分はさらにその2分の1ずつ、つまり、母Bの遺留分は4分の1、子Dの遺留分は
8分の1になります。
ですから、父Aが子Cに全部を相続させたいと思っていたとしも、
父の死後、B・Dが自分たちにも遺留分があるだろうと言ってくれば、
CはBDにもそれぞれの遺留分をあげないといけませんよという訳です。 |
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2. 但し、相続人の中でも故人の兄弟姉妹に限っては遺留分は認められていない
ので要注意です。つまり、兄弟姉妹が相続人になるときは、故人から遺言でどんなに
取り分を減らされようと、故人の兄弟姉妹は何も言えないという訳です。 |
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3. また、遺留分が実際に侵害されている場合でも、文句を言えるのはその本人で
あって、侵害された相続人等の債権者が、その相続人等に代わって文句を言うこと
は、特段の事情がない限り、できません。 |
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※2 法定相続分は、以下のとおりです。 |
相続人には、配偶者相続人(下の①)と、
血族相続人(下の②③④)の2種類があります。 |
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もし直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹がいなければ、配偶者が全部を相続します。
但し、配偶者といっても、内縁では、いくら長いつきあいでも相続人になれません。
また、内縁の取扱いは、民法と、年金や保険では異なっていますから、
注意して下さい! |
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② |
直系卑属 |
(子、子が既に亡くなっていれば孫)が第1順位です。 |
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(普通)養子は、実子と同じ扱いです。 普通養子は、実親・養親両方の相続人になります。
養親だけではなく、実親の相続人にもなれますので注意してください。
また、被相続人よりも先に子どもが死亡した場合には、孫が子どもに代わって代襲
相続できるかが問題となります。
この場合に、普通養子Aが養子縁組する前に生まれていたAの子B(いわゆる連れ
子)は、直系卑属ではないので代襲相続できませんが、
普通養子Aが養子縁組をした後に生まれたAの子Cは、直系卑属として代襲相続で
きますので、注意してください。 |
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相続分は、もし配偶者がいなければ、直系卑属である子(孫)が全部を相続します。
しかし、配偶者がいれば、配偶者が2分の1、直系卑属である子全員で2分の1を
相続します。 本妻でない母親から生まれて認知された子の相続分が争いになっていましたが、
最高裁違憲判決により、平成25年9月5日以後に開始した相続については、 本妻の子と同じ相続分になりました(民法900条改正)。
なお、認知されていなければ、たとえ血は繋がっていても相続人ではありません。
ご注意ください。 |
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また、AがBと再婚しBが死亡したとき、Aの連れ子Cは、Bの養子になっていない
と、Bが死亡した場合の相続人にはなれません。
たとえCがBと一緒に生活していても、Bの面倒を看ていたとしても、
Cは相続人ではありません。
誤解されている方が多いので、注意して下さい。 |
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更に、故人の死亡時にはまだ生まれておらず、胎児だった者はどうなるかですが、
胎児が後で生きて生まれると、初めから故人の相続人であった扱いになります。
もともと胎児はまだ「人」ではないので相続「人」にもなれないはずですが、
民法は相続については例外的に胎児も「人」だとみなしているからです。
そのため、胎児が生まれる前に遺産分割協議がなされていると、
遺産分割協議に全員が参加していなかったことになり、
やり直さなければならなくなります。
従って、胎児がいる場合には、
胎児が生まれるまで遺産分割協議を待つのが 賢明です。 |
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③ |
直系尊属 |
(血族に限りますので、故人の祖父母を指し、故人の配偶者の祖父母は |
含まれません)が第2順位です。 |
第1順位(子(孫))がいないときのみ、相続人になれます。
従って子(孫)がいないときに、
もし配偶者もいなければ、直系尊属が全部を相続しますが、 配偶者がいれば、配偶者は3分の2、祖父母全員で3分の1を相続します。 |
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④ |
兄弟姉妹 |
(血族に限りますので、故人の兄弟姉妹を指し、故人の配偶者の兄弟姉 |
妹は含まれません)が第3順位です。 |
第1・第2順位ともいないとき(子(孫)も祖父母もいないとき)のみ、
初めて相続人になれます。
このとき、配偶者がいなければ兄弟姉妹で全部を相続しますが、
配偶者がいれば、配偶者は4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1を相続します。
但し、片方の親だけが故人と同じ兄弟姉妹(半血兄弟といいます)は、
両方の親とも故人と同じ兄弟姉妹(全血兄弟といいます)の、半分だけになります。
もし、兄弟姉妹が故人より先に死亡していれば、その兄弟姉妹の子(故人から見て
甥・姪)が代襲して相続します。
しかし、兄弟姉妹で代襲するのは1代限りですので、
もし、その甥・姪も故人より先に死亡していたら、もはや相続人はいません。 |
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⑤以上を通して、同順位者が複数いれば、同順位者どうしは平等です。 |
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自分に相続分はあるのか、あるとしてどの位かを知ることは、非常に大切なことです。
決して気兼ねしたり、みっともないことではありません。
当事務所では、相続の質問一般につき広くご相談を承っています。
遠慮なくお訊き下さい。 ご相談があれば、こちらへどうぞ。 |
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できるだけ、条文の文言・趣旨・判例等を壊さないように配慮しながら、
判りやすい言葉で書 いてい ます。 |
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